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美容師の独立でやるべき事・必要な事、注意事項

一般的な起業については、『起業した企業の5年後の廃業率は、個人事業で約7割強、法人では約5割の会社が廃業している』という統計データがあり、起業するまでは簡単だが生き残るのは厳しいのが現状だと思います。

更に美容業界での起業については、『美容室やネイルサロンの廃業率は、1年以内で閉店するサロンは60%、3年以内だと90%、10年以内では95%といわれている』ようで、普通の起業より遥かに厳しい現実となっているようです。
このため、美容院のスタイリストさんが独立する際、少しでも廃業率が低下すればと思い、独立・開業の際の注意点等をブログにまとめました。

1. 独立前の準備内容や注意点

価格表の作成

価格表の作成は非常に重要です。現在勤めている美容院の価格表が自分の技術や接客レベルに合っている場合は、そのまま活用するのも一つの方法です。しかし、もしサービスの質が価格に見合っていないと、低評価の口コミがつく可能性があり、後々の修正が難しくなることも考えられます。独立後の信頼を築くためにも、自分のサービス内容に見合った価格設定を心がけましょう。

②立地の良い店舗探し

美容院の立地選びは、成功の鍵となる非常に重要な要素です。しかし、立地が良いほど賃料も高くなる傾向があるため、自分の技術や集客力に見合った場所を選ぶことが大切です。適切な立地を見つけることができれば、サロンの継続にも大きく影響を与えるでしょう。

・立地選びに関する考え方の例

立地選びに関する考え方は、その人の持つスキルにより大きく変わると考えます。

例えば、インターネットでの宣伝が得意な方は、立地が多少悪くても集客が可能です。そのため、宣伝スキルが高ければ、賃料が安い立地で開業しても問題ない場合があります。しかし、宣伝競争が激しい美容業界で、宣伝力を武器に他店と差別化することは非常にハードルが高い点に留意する必要があります。

また、技術や接客レベルが高い方は、賃料が高くても好立地を選ぶことが効果的な場合があります。高いサービスレベルを提供していても、所得水準が低い地域で開業すると、価格を低く設定せざるを得なくなり、集客に苦労する可能性があるからです。しかし、賃料が高い場所を選ぶと、開業初期のスタートダッシュに失敗した際に資金が不足するリスクも高まりますので、慎重な判断が求められます。

上記は一例に過ぎませんが、自分の技術やスキル、立地、そしてサービス価格は密接に関連しています。そのため、店舗選びの際にはこれらを総合的に考慮することが非常に重要です。

・居ぬき店舗のメリットとデメリット

ここでは、居ぬき店舗について私の考えをお伝えします。店舗探しをしていると、前の美容院が移転したり閉店したりして美容設備がそのまま残っている居ぬき店舗を紹介されることがあります。居ぬき店舗は、内装工事費用を抑えられ、資金的に余裕ができるため魅力的です。しかし、その一方で、前の美容院がどれだけ努力しても成功せず廃業に至ったケースも考えられます。ですので、なぜその店舗が空いたのか、不動産屋に確認し、その問題を自分が解決できるかを慎重に考えることが大切です。

③看板・サイン計画

せっかく店舗を開店しても、看板が無ければお客さんに店舗の存在を認知して貰えません。
実際に、目の前を通勤しているのに3年間気づかれなかった美容院さんが、進行方向の縦向きに電飾看板を置いたところ新規顧客が増えたという話もあります。
窓等の店舗正面だけでなく、通行人の目線に入る方向にも看板を設置できるか、1階にも設置できるかを事前に確認しておくことをお勧めします。良い立地なのに1階に看板を一切設置できず、苦戦している美容院さんも実際いるので注意しましょう。

④資金の準備

開業資金や初期運転資金を確保する必要があります。内装工事代、シャンプー台等の設備購入代金、店舗の敷金や保証金、賃貸料、美容商材材料の購入、スタッフさんへの給料や広告費用などが必要です。内装工事代などは着手金として半金を前もって振込むケースが多いので、注意しましょう。

借入等を行う場合は、日本政策金融公庫での借入が一番しやすいと思いますが、開業で必要となる資金の3割程度は自己資金を用意しましょう。自分で貯金した実績があると借りやすいと思います。

⑤事業計画の作成

事業計画がなくても成功する方はいるかもしれませんが、上記①~④を参考に事業計画を作成することで、成功率を高めることができるでしょう。
詳細は省きますが、まず開業前(0年目)に必要となる内装工事代等を記入し、事業開始初年度(1年目)については月単位で運転資金や売上高を記入して必要となる借入金や自己資金で賄えるかを検討し、2年目以後は年単位で作成して10年程度の計画とすると良いと思います。

また、日本政策金融公庫で借入する際には、創業計画書に『事業の見通し』として簡単な事業計画を記載する必要があります。借入の申し込み前に事業計画をしっかり作り込んでおくと良いでしょう。
創業計画書の記入例については、下記のリンクを参考にしてください。

⑥事業用の通帳口座・クレジットカードの準備

独立開業前に、事業用の通帳口座とクレジットカードを準備しておくことをおすすめします。

プライベート用と事業用のお金を分けて管理することで、

  • お金の流れが明確になり、収支を把握しやすくなります。
  • 確定申告の際に、経費の計算がスムーズになります。
  • プライベートと事業の資金を混同してしまうリスクを防ぎます。

毎日忙しい状況の中で、事業用の経費とそうでないものを分類することは大変です。事業用の通帳口座とクレジットカードを使うことで、これらの経費を明確に管理し、確定申告をスムーズに行うことができます。

また、確定申告を税理士に任せることになった場合でも、事業用とプライベートの区別が明確であれば、税理士とのやり取りがスムーズになり、誤りを防ぐことができます。さらに、税理士が記帳や確定申告を効率的に行えるようになり、料金を抑えられる可能性もあります。

通帳口座は、毎日の売上金を入金することも多いため、お店の近くにATMがある銀行を選ぶと良いでしょう。またcsvデータの保管期間が長いく入手が容易など、インターネットバンキングが使いやすい銀行だと理想的です。

⑦モデルさんの写真の保管場所

美容院経営では、広告宣伝費をできるだけ抑えて経営することが重要です。ホットペッパービューティーなどで集客する場合、モデルさんの写真は必ず必要になります。

しかし、パソコンが壊れてしまい、過去に撮影したモデルさんの写真が大量に失われたというケースも少なくありません。大切な写真データを失わないためにも、クラウドサービスを活用した保管をおすすめします。
また、個人情報等の外部流出は信用問題に大きくかかわりますので、2段階認証やパスワードの強化など、セキュリティ対策をしっかりと行いましょう。

⑧場合によっては、独立の先延ばしも検討しましょう

上記の検討を行った結果、独立が厳しいと感じた場合は、無理をせず独立を先延ばしして、その間にスキルアップに努めましょう。
スタイリストとしての技術向上はもちろん、現在の美容院が行っている宣伝活動やホームページ作成活動に関わらせて貰うなど、自分に必要なスキルを身につけることが重要です。
独立後の3年以内の廃業率が90%にも達する現実を軽視せず、慎重に準備を進めることが成功への鍵だと思いいます。

2. 独立後の経営活動内容や注意点

①ホットペッパー、インスタグラム、フェイスブック等での宣伝

ホットペッパーやSNSの充実化や定期的な更新など、宣伝活動は非常に重要です。良い外注先が見つかれば、外注に任せるのも一つの方法ですが、Googleなどで検索上位を目指すには多額の費用がかかる場合もあります。
また、美容師自身の言葉でホームページを作成することで、より良い結果を得られることも多いようです。そのため、ホームページ教室の講師などにサポートを受けながら、自分で手をかけて作り込んでいくことをおすすめします。

②スタッフ教育とモチベーションアップ

ご存じの通り、スタッフの美容技術や接客スキルの向上は非常に重要です。自ら指導するのはもちろんのこと、外部講師の招致や研修動画サイトの契約なども積極的に検討しましょう。
また、スタッフが働きやすい環境づくりも欠かせません。職場に笑顔が絶えないよう社内イベントを開催して、スタッフ同士が楽しくコミュニケーションを取れる場を作りましょう。こうした取り組みが、お客様との自然な会話や、素敵な接客につながる職場づくりに貢献します。

3. 確定申告や社会保険について

①白色申告での確定申告

1人で美容院を開業する場合、白色申告であれば自分で確定申告することも可能です。その際は、開業届の提出、最寄りの税務署への相談、確定申告時期に実施される地方自治体の確定申告相談会の活用などを検討しましょう。

②青色申告での確定申告

スタッフさんを雇用して美容院を開業する場合や、初年度に大きな損失が予想される場合は、青色申告での確定申告が有利になるケースが多いです。事業開始日から2か月以内に税務署へ青色申告承認申請書を提出することで、青色申告特別控除や損失の3年間繰り越しなどの優遇措置を受けられます。ただし、青色申告には簿記の知識が必要になるため、知識がない場合や忙しい場合には税理士に依頼することをおすすめします。

③スタッフさんの社会保険業務

スタッフさんが加入する社会保険には、下記の種類があります。専門家に相談したい場合、その相談先は社会保険労務士さんになります。

・労災

労災保険とは、簡単に言えば、労働者が業務中や通勤中にケガをしたり、死亡したりした場合に適用される保険です。通勤途中の事故なども対象となります。未加入のまま事故が発生すると、その補償を経営者が負担する可能性があるため、必ず加入するようにしましょう。
2024年9月現在の労災保険料率は0.3%で全額が事業主負担で、基本的に所轄の労働基準監督署が、申請や相談の窓口になります。

・雇用保険

雇用保険とは、労働者が失業や休業などで働けなくなった際に、生活の安定を支えるための給付を行う保険です。未加入の場合、失業手当などの給付が受けられなくなりますので、要件を確認し、該当する場合は必ず加入しましょう。
美容院さんの場合、2024年9月現在の雇用保険料率は給与支給総額の1.55%(内、従業員負担分0.6%をスタッフさんの給与から徴収)で、基本的に所轄のハローワークが、申請や相談の窓口になります。

・健康保険料(40歳~64歳までは介護保険料も発生)、厚生年金保険料、子供・子育て拠出金

2024年9月現在の大阪府の協会けんぽの場合、健康保険料と厚生年金保険料の料率は給与支給総額の10.34%と18.3%となっており、40歳~64歳の方は介護保険料の1.6%が追加で発生します。これらは労使折半である為、事業主はこれらの半分をスタッフさんの給与から徴収し、事業主負担分と合わせて納付する事になります。
また、2024年9月現在の子供・子育て拠出金として給与支給総額の0.36%の全額を事業主が負担し、納付する事になります。
※上記の健康保険料等については、毎年料率が変更になる事が多いのでご注意ください。

個人事業の美容院さんについては、従業員が5人以下の場合には上記の協会けんぽの健康保険料、厚生年金保険料、子供・子育て拠出金への加入義務はありません(任意加入は、要件を満たせば出来ます)。協会けんぽに加入しない場合、スタッフさんそれぞれに国民健康保険や国民年金に個人で加入して貰う事になります。
協会けんぽに加入した場合、より良いスタッフさんを雇用できる可能性が上がり、離職率の低下の効果もあると思いますが、上記のように負担が大きいため、慎重に検討する必要があります。
また、例えば大阪の場合の『大阪府整容国民健康保険』のように、上記の協会けんぽの健康保険料の代わりに個人事業者の美容師さんが加入できる健康保険がありますので、そちらの方も検討してみる事をお勧めします。

以上、社会保険については料率が毎年変更になりますし、上記の説明は相当簡略化した内容となっておりますので、詳細は社労士さん等にご相談下さい。

4. 財務について

美容院さんの場合、基本的に現金収入とクレジットカードの入金が翌月入金となるので、事業規模が大きくない初期はPOSと通帳残高を見ていれば大体の財務状況が把握できると思います。
なので、特に財務について猛勉強が必要という事は無いと思いますが、過度な節税を行うと手元資金が無くなり、新規出店や新規雇用のチャンスを逃す事につながるなど最低限の知識は必要だと思います。
ある程度、事業が軌道に乗ってきた場合、分かりやすく説明する税理士に依頼する事をお勧めします。

5.最後に

美容院さんは私が一番長い時間をかけてお付き合いした業種の一つで、税理士の中でも詳しい方だと思います。特に美容院さんは法人化する際の選択肢でその後の出費が大きく変わることもあるので、大阪、兵庫、京都で独立や美容院の法人化をご検討されている方は、お気軽にお声がけ頂けたら幸いです。

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